ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No4

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日本結晶学会誌Vol56No4

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日本結晶学会誌Vol56No4

小田隆,橋本博図3CENP-AヌクレオソームのSAXS解析.(SAXSanalysis of CENP-A nucleosome.)A)H3.1およびCENP-Aヌクレオソームの結晶構造. H3.1およびCENP-Aはそれぞれ黒,赤で示している.結晶構造中でディスオーダーしているDNAは青の破線で示す.B)P(r)とD max.ムでは49.4 Aであり,大きく異なる.P(r)はH2Aヌクレオソームでは幅の狭い釣鐘型であるのに対し, H2A.Bヌクレオソームでは幅広化しテーリングしていた.さらに,D maxはH2Aヌクレオソームでは125 Aであるのに対しH2A.Bヌクレオソームでは195 Aとかなり大きくなっている(図4B).これらの結果からH2Aヌクレオソームはコンパクトな形状をしているのに対し, H2A.Bヌクレオソームは大きく広がって揺らいだ構造をとっていることがわかる.得られたDAMはH2Aヌクレオソームでは結晶構造とよく重なったのに対しH2A.Bでは巻きついているDNAの両端部分がはがれて,外側に張り出した形を示した(図4C).すなわちH2A.Bヌクレオソームではヒストン8量体に巻きついているDNAの両端がはがれて揺らいだ状態をとることにより緩んだクロマチン構造を形成できるということを示している.ではこのようなヌクレオソームの構造はヒストン8量体のどのような構造変化によって引き起こされたのだろうか?中性子小角散乱法(SANS)はこのような複合体のサブユニット各々の構造情報を別々に観測できる手法の1つである.中性子の特徴は軽水素と重水素で散乱能図4H2A.BヌクレオソームのSAXS解析.(SAXS analysisof H2A.B nucleosome.)A)H2AおよびH2A.BヌクレオソームのI(q)とR g. B)P(r)とD max. C)H2AおよびH2A.BヌクレオソームのDAM.オレンジのリボンモデルで示すH2Aヌクレオソームの結晶構造(PDB code 3AFA)と重ね合わせた.(散乱長, Scattering length)が異なることである.小角散乱ではタンパク質(あるいはDNA)と溶媒である水との散乱能の差(コントラスト)が正味のタンパク質粒子からの散乱として観測される.そこで溶媒の軽水・重水の比を調整することでタンパク質あるいはDNAとのコントラストを0にすることができる(図5A).ヌクレオソームでは軽水60%,重水40%の条件でタンパク質と溶媒のコントラストが0になるため,巻きついているDNAの散乱のみを観測できる.一方,軽水35%,重水65%の条件ではDNAと溶媒のコントラストが0になるためタンパク質,つまりヒストン8量体の散乱のみを観測できる.杉山らは英国ラザフォード・アップルトン研究所のISISにおいて250日本結晶学会誌第56巻第4号(2014)