ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No4

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日本結晶学会誌Vol56No4

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概要

日本結晶学会誌Vol56No4

脂質キュービック相法を用いた膜タンパク質の結晶化セットが必要な場合があるが,そのような場合はタンパク質を再構成したLCPを専用シリンジに移し替える.次に,結晶化ロボットによりドロップを作製する.詳細な操作は結晶化ロボットにより異なるが,基本的な操作としては,ニードルの先端から少量のLCPを結晶化プレートのウェルにスポットし,その上からリザーバー溶液を被せる.サンドイッチプレートの場合は,ドロップやリザーバー溶液を挟み込むようにしてプレートをシールする(図5).シッティングドロッププレートやハンギングドロッププレートの場合は, LCPのドロップの上にリザーバー溶液を被せた状態でウェルをシールし密閉する(図5).3.4結晶の観察LCP法による結晶化では,結晶が生じるまでに数時間程度しか時間がかからない場合もあれば,長くて1カ月程度かかる場合もある.結晶の大きさは,長い辺で数百μm程度まで成長する場合もあるが,初期スクリーニングでは10μm程度の小さな結晶である場合が多い(図6).また,シッティングドロッププレートで結晶化した場合,LCPドロップの屈折率のためにドロップの内部が観察しづらく結晶を見つけにくい.微小結晶や,シッティングドロッププレートでの結晶の観察では,偏光顕微鏡や, UV顕微鏡を用いると結晶の発見が容易になる.4.脂質キュービック相法における特有の問題点4.1結晶のピックアップサンドイッチプレートから結晶を回収する際には,プレートとシールによりドロップを挟み込んでいるために,ほかのプレートからの結晶の回収と異なり,注意すべき点がいくつかある.さらに,脂質相の状態によって脂質の粘性は大きく異なるため,キュービック相とスポンジ相で取り扱いの方法を変える必要がある.結晶化の条件にもよるが,一般に沈殿剤の濃度が低ければ脂質はキュービック相となり,その粘性は高く,ほとんど固体のように扱うことができる.一方で沈殿剤の濃度が高ければ脂質はスポンジ相となり,非常に粘性が低く液体のようになる.脂質がキュービック相である場合,ウェルを開けても脂質のドロップはその形状を保っており,脂質中の結晶をループで拾うことは容易である(図7).ただしこの際,脂質が空気に触れて乾燥すると相転移が起こるため,リザーバー溶液と同条件の溶液を加えて乾燥を防ぐ必要がある.脂質がスポンジ相である場合,脂質は液体のような挙動をするために,脂質のドロップの形状を保ったまま,ウェルを開けることは非常に難しい.そのような場合, Li, Dらの報告9)にあるような方法を用いてウェルを開けるか,あるいは,ウェルに小さな穴を開け,沈殿剤の濃度を下げたリザーバー溶液でウェルを満たすことで脂質をキュービック相に相転移させ,取り扱いやすくした後にウェルを開ける(詳細は5.1で後述する).脂質中の結晶は,脂質やリザーバー溶液中のPEGなどが抗凍結剤の役割をするため,脂質ごとループに載せ,液体窒素より凍結させる.4.2結晶のセンタリング上で述べたように,結晶は脂質とともにループにのることになる.凍結した脂質は,沈殿剤の種類や濃度などの条図5LCP法による結晶化で用いられるプレートの模式図.(LCP crystallization plates.)図6 LCP結晶の例.(LCP crystals.)スケールバーは50μmを示す.(a)LCP法で見られる典型的な微結晶.(b)LCP法で見られる柱状結晶.日本結晶学会誌第56巻第4号(2014)図7サンドイッチプレートにおける結晶回収手順の模式図.(Harvesting crystals from sandwich plates.)(a)カッターなどを用いてシールを取り除く.(b)LCPの乾燥を防ぐためにリザーバー溶液を加える.(c, d)ループにより脂質ごと結晶を回収する.233