ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No6

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日本結晶学会誌Vol55No6

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概要

日本結晶学会誌Vol55No6

低エネルギー電子回折イメージング図8単層カーボンナノチューブ再構成像.(Reconstructedpattern of SWCNT.)図6 MgO微粒子の回折パターンとBF-STEM像.(Diffractionpattern and BF-STEM image of MgO nanoparticle.)(a)回折パターン全体,(b)020回折スポット,(c)220回折スポット,(d)200回折スポット,(e)BF-STEM像.図7単層カーボンナノチューブの回折パターン(白黒反転).(Diffraction pattern of SWCNT: reversed.)ームを収束することで平行度を高くした.この場合の開き角は絞りの開口径でコントロールし, 0.05~0.3 mradの間で可変としている.回折パターンは対物レンズの後側焦点面を投影するのではなく,検出器(IPおよびCCDカメラ)を試料から十分離すことで得る.この装置を用いて得た回折パターンの例を図6に示す.試料にはMgO微粒子を用い,そのSTEM像を挿入した.STEM像から,微粒子の大きさは30 nm程度であることがわかる.晶帯軸[001]から少しずれた入射の回折パターンにおいて,スポット020, 220と200を拡大して示したように,微粒子形状に由来するフリンジが得られていることがわかる.日本結晶学会誌第55巻第6号(2013)低エネルギー電子回折イメージングの原子分解能検証に用いたSWCNTの回折パターンを図7に示す.照射電子ビームのエネルギーは30 keVであり,開き角は0.15 mrad,カメラ長(試料とIPとの距離)は446 mmである.得られた回折パターンから, SWCNTの直径を3.2 nm,カイラリティを(30, 16)と導出した.また,照射ビームに対してSWCNTは垂直でなく, 8度(±2度)程度傾斜していることがわかった. 27)この傾斜の影響は,後に示すシミュレーション像の導出に反映させた.図7に示した回折パターンは,中心対称性を示していないことがわかる.例えば,対称位置にあるlayer line(図中AA’とBB’)では, AA’が中心で強度が高いのに対して,BB’では強度が高い位置が分かれている(図中強度が高い位置を三角で示した).この非中心対称性は,ナノチューブが傾斜しエバルト球が曲面であることの影響である. 33),34) SWCNTでは運動学的近似が成り立つと仮定し,回折パターンの中心対称化を行った.さらに以下のノイズ低減を行った:1ダイレクトビーム近傍の強度からガウス分布を仮定してバックグラウンドを引いた(非弾性散乱に由来する強度を近似した). 2回折パターン全体に対して一様強度を引いた.加えて,ダイレクトビーム近傍で以下の処理を行った:ダイレクトビーム近傍では回折強度が高く,検出器のダイナミックレンジを超えて強度データが飽和している.すなわち飽和した領域では,正確な回折強度分布とはみなせなくなる.そこで, IPの2回読み取りをすることで,飽和した領域の強度を再現させ,この問題を解決した. 27)これらの像処理を施した回折パターンにフーリエ反復位相回復法を適用した再構成像を図8, 9に示す. 27)再構成像を得る際のフーリエ反復位相回復では, HIOでの100回の反復計算とERでの1000回の反復計算を1セットとし,これを10セット繰り返した.図8aは得られた再構成像で,図8bには特徴的な構造を抽出して示した.また,図8c対応する原子配列モデルを示した.さらに詳細に見るために,図8aの中央付近を抽出したものを図9aに示す.比較のためのシミュレーション結果として, exit waveの振幅353