ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No5

ページ
8/62

このページは 日本結晶学会誌Vol55No5 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

日本結晶学会誌Vol55No5

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

日本結晶学会誌Vol55No5

木原裕,新庄正路,松村義隆った.というのは,βラクトグロブリンは,通常の二次構造予測のプログラムを用いて計算すると,結晶解析で求めた立体構造と異なり,αヘリックスが多く予測される.したがって,フォールディングの初期段階で,そのような傾向が現れるのもやむを得ないと.また,ユビキチンにはαヘリックスが含まれているので,フォールディングの初期過図4Src SH3ドメインタンパク質の立体構造(PDB code:1 srl).(Structure of Src SH3 domain protein(PDBcode:1 srl).)黄色;βシート構造,赤色;3 10ヘリックス部分を表す.編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.程に少々αヘリックスができすぎることもあるかもしれないと.われわれもそういう期待をこめて,次のフォールディング実験の対象として,最もαヘリックスなどできそうにないSH3ドメインタンパク質を選んだ.3.2 Src SH3ドメインタンパク質二次構造としてβ構造しか含まないSrc SH3ドメインタンパク質(図4参照)は,実際通常の二次構造予測プログラムを用いて計算してもαヘリックスができそうになかった. 5)しかし結果はまったく予想を覆すものであった.図5aにpH3, 4℃で測定した紫外円偏光二色性の結果を示した. Src SH3ドメインタンパク質のフォールディングは,ユビキチンの場合(図3b)より,はるかに多くのαヘリックスを初期中間体中に含んでいることがわかったのである.このときできる初期中間体のαヘリックス含量は~25%で,実験条件(温度,添加不凍液=エチレングリコールの量)によらず一定で,初期中間体の構造がこのような条件によらないロバスト(注1)なものであることがわかった.図5bはX線溶液散乱データから求めた慣性半径の時間経過を示す.初期中間体の慣性半径は変性状態のものよりずっと小さく, nativeな状態のそれよりやや大きかった.この中間体の散乱曲線のKratkyプロットをとると, 100 msですでにピークを示すプロフィールとな図5pH3, 4℃でのSrc SH3ドメインタンパク質のフォールディング.(Folding of Src SH3 domain protein monitored bycircular dichroism and cryo-Xray solution scattering at pH3 and 4℃.)(a)紫外円偏光二色性の時間経過(circulardichroism),測定波長:222 nm.(b)蛍光強度の時間経過(fluorescence),励起光295 nm,測定光340 nmより長い光を集めている.(c)X線溶液散乱から求めた慣性半径(Rg)の時間経過(radius of gyration from X-ray scattering),■は静的測定から求めたinitialとfinalの値.(d)X線溶液散乱データのKratkyプロット(Kratky plots from X-rayscattering data). 100 ms(中間体に相当)と5 s(finalに相当).274日本結晶学会誌第55巻第5号(2013)