ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No5

ページ
6/62

このページは 日本結晶学会誌Vol55No5 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

日本結晶学会誌Vol55No5

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

日本結晶学会誌Vol55No5

木原裕,新庄正路,松村義隆図1ストップトフローを用いた変性剤濃度希釈法によるタンパク質フォールディング実験の原理.(Schematic viewof folding experiments with a cryo-stopped-flow method.)(a)ミキサー原理図,(b)ストップトフロー原理図,(c)変性剤によるタンパク質の変性曲線とinitial, final濃度の説明,(d)変性剤濃度希釈法によるフォールディングの時間的変化とinitial, final(模式図).ストップトフローを用いた変性剤濃度希釈法によるタンパク質フォールディング実験の原理図. 5)変性条件にある試料1と緩衝液6とを1:6の割合で混合し,最終濃度がnativeな構造に巻き戻る過程を種々のプローブで観察する.混合を確実にするために図(a)に示すような2段ミキサーを用いている.観測にあたっては,真ん中の図(d)に示すように,変性→再生の実験だけではなく,変性条件にある試料1と変性条件にある緩衝液6とを混合し, initialとして測定する.観測曲線とinitial曲線のスタートの値が異なるとき,観測にかかる変化より速い現象が起こっていることを示している.2.αヘリックスの生成速度最初にわれわれは,タンパク質の二次構造であるαヘリックスの生成過程を調べるために,αヘリックスからなるオリゴペプチドのC17, AK16(それぞれ17個, 16個のアミノ酸のつながり)を用いて測定した.その結果,いずれも?30℃ぐらいまで温度を下げてもストップトフロー装置の不感時間(≦6 ms)以内にαヘリックスの生成が終了していることが判明した.またアポミオグロビン(ヘムを除いたミオグロビン)のフォールディングも?20℃では不感時間以内にフォールディング過程が終了していた.これらはαヘリックスが関与する限り,フォールディングは速い時間内に形成されることを示し,温度ジャンプ法の結果とよく合致するものであった.3.β構造を含むタンパク質のフォールディング3.1ユビキチンユビキチンは二次構造としてβ構造を多く含む(αヘリックスも含む)(図2参照)タンパク質で,そのフォールディングについては,蛍光をプローブとして,すでに多くの研究がなされていた.われわれは当初従来の研究と同様の結果が得られることを期待して,このタンパク質を最初のターゲットとして選んだ. ?20℃で行った測定結果は図3に示したとおりである. 6),7)272日本結晶学会誌第55巻第5号(2013)