ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No5

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日本結晶学会誌Vol55No5

クリスタリット点電荷モデルPoint Charge Model点電荷モデルとは,電荷をもつ粒子を数学的な点に理想化して取り扱うモデルである.点電荷モデルを用いて結晶中の電気分極を計算する場合,結晶中のイオンを価数に電気素量を掛けた大きさの電荷をもつ点として扱う.結晶中のすべてのイオンについて対称位置からの変位量と電荷を掛け合わせたモーメントを足し合わせ,格子体積で割ることによって,電気分極の大きさと方向を見積もる.(東京工業大学応用セラミックス研究所岡研吾)自然免疫Innate Immunity免疫は自然免疫と獲得免疫に大きく分けられる.自然免疫は,細菌やウィルスなどの病原体を貪食や炎症によって排除する機構であり,生体にあらかじめ備わっている迅速な生体防御反応である.一方,獲得免疫は,病原体の抗原に対する抗体産生を特徴とし,活性が出るまでに数日を要する.病原体が生体内に侵入すると,好中球やマクロファージなどの食細胞が病原体を貪食処理し,サイトカインを放出して炎症反応を制御する.これが自然免疫である.一方でマクロファージや樹状細胞などは,病原体の情報をT細胞に伝えて抗体産生を促し,獲得免疫を誘導する.獲得免疫は脊椎動物以降の生物のみがもっているが,自然免疫は植物や昆虫などほとんどすべての生物がもっており,進化的に古い防御反応であると考えられている.(東京大学大学院薬学系研究科丹治裕美)ロイシンリッチリピートLeucine-Rich Repeatロイシンリッチリピートは, 20 ?30アミノ酸配列の繰り返しから成るタンパク質のモチーフの1種である.βシート部分とαヘリックス部分が1つの単位である.この単位の繰り返しによって,全体としてβシートが内側に,αヘリックスが外側に位置するコイル状の馬蹄形構造を形成する.βシート部分はxLxxLxLxxN(xはどのアミノ酸でもよい)の配列から成り,ロイシンが繰り返し並ぶことから,ロイシンリッチリピートと呼ばれる.ロイシンリッチリピートはさまざまなタンパク質に存在し,例えばリボヌクレアーゼ(RNase)インヒビターが有名である.(東京大学大学院薬学系研究科丹治裕美)S2細胞S2 CellS2細胞は,ショウジョウバエ胚由来のマクロファージ様の細胞である.接着性が弱く浮遊状態での培養が可能であり,培養に二酸化炭素を必要としないため,取り扱いが日本結晶学会誌第55巻第5号(2013)容易である. S2細胞に目的のベクターをトランスフェクションした後,ハイグロマイシンやブラストサイジンなどの抗生物質を用いてセレクションを行うことで,安定発現株を作製することができる. S2細胞によるタンパク質の発現量は,多いときには10 mg/L培地以上になり,タンパク質の大量調製が可能である. S2細胞を用いたタンパク質の発現系では,一般に大腸菌では困難な糖鎖修飾などの高度な翻訳後修飾や,分泌発現を行うことができる.(東京大学大学院薬学系研究科丹治裕美)電歪係数Electrostrictive Coefficient誘電体材料に外場である電界を印可した際に内部に双極子モーメントが誘起され,電気分極を生ずる.その際に結晶も併せて機械的な歪みを生ずる.この効果を電歪効果と呼ぶ.電歪係数Qは電気エネルギーおよび機械エネルギーの変換係数としての指標として扱うことが可能である.電界に対して,一次の効果を圧電,二次の項を電歪と呼ぶ.圧電効果は極性結晶のみに生ずる効果であるが,電歪効果はすべての結晶に生ずることが知られている.非対称性を有する極性構造の強誘電体,焦電体および圧電体に関しては,低電界側では一次の圧電効果が主となり,高電界側では二次の電歪が主となる.強誘電体セラミックスが有する電歪係数はおおよそ一定の10 ?2 C 4 /m 2を有する.(東京工業大学応用セラミックス研究所安井伸太郎)MOCVD(有機金属化学的気相堆積法)Metal-Organic Chemical Vapor Deposition出発原料に有機金属を用い,化学反応を応用した堆積法である.有機金属原料をH 2, N 2, Arなどのキャリアガスで反応室に運び,熱などのエネルギーによって化学反応を起こす.キャリアガスの流量,原料温度,気化圧力などによって,反応室に供給する原料濃度を制御することで,作製する薄膜の組成比を細かく制御することが可能となる.主にGaNやGaAsなどの高品質化合物半導体を作製する際に使用されている.比較的低真空での成膜が可能であるために, MBEなどの高真空装置が必要なく,大面積基板への成膜が可能であり,また高速成膜により高いthroughputを実現することが可能である.酸化物を作製する場合には,酸素ガスを導入することにより酸素雰囲気下で化学反応を促進し,酸化物薄膜の合成が可能となる.結晶成長の観点を重んじることからMOVPE(Metal-Organic VaporPhase Epitaxy)とも呼ばれている.(東京工業大学応用セラミックス研究所安井伸太郎)317