ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No5

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日本結晶学会誌Vol55No5

高分解能EELSによる六方晶ダイヤモンド粒子の誘電特性いると, 0.70×10 24[electrons/cm 3]となり, c-DIAの価電子密度0.71×10 24[electrons/cm 3]とほぼ等しい.この値から予想されるプラズモンエネルギーは31 eVとなり,実験結果に近い値となる.計算に比べて実験のプラズモンエネルギー(34 eV)が大きい理由は,低エネルギー側で誘起されるバンド間遷移により,プラズマ共鳴条件が高エネルギー側にシフトしたことに起因する. 22.5 eVにスペクトル構造を観測できる.これはダイヤモンドのσ-σ*遷移に起因したスペクトル構造である. h-DIAのスペクトルは,エネルギー領域4~12 eVでc-DIAと異なっている様子が明確に観測できる. c-DIAの強度立ち上がりは5.5 eVに観測されるのに対し, h-DIAは4.2 eVに観測される. c-DIAの強度立ち上がり位置は,バンドギャップエネルギーに対応することがわかっている.よって, h-DIAのバンドギャップエネルギーは, c-DIAよりも小さいことがわかる.さらにh-DIAのスペクトル構造が5.1 eV, 7.5 eV, 12 eVに観測され, c-DIAとは異なるスペクトル構造が観測できる.これはバンド間遷移の違いに起因し, h-DIAがc-DIAとは異なる電子状態であることを表す.EELSスペクトルの強度分布は損失関数Im[?1/ε]に比例しているため,そのピーク構造のエネルギー位置は,直接的にはバンド間遷移エネルギーに対応しない.正確なバンド間遷移エネルギーを調べるためには,誘電関数の導出を行うことが必要である.損失関数Im[?1/ε]からKramers-Kronig変換を行うと関数Re[1/ε]が導出される.この2つの関数からRe 1εε=Re 1εIm 1εIm ?1εε=Re 1εIm 1εにより誘電関数を得ることができる.実験的に得られたEELSスペクトルから損失関数を得るため,バックグラウンド強度であるゼロロスピーク裾野強度と複数回のプラズモン散乱によりエネルギーを失った電子の強度分布・多重散乱強度を除去する必要がある.ゼロロスピーク裾野強度はローレンツ関数を用いてフィッティングを行い,差し引いた.多重散乱強度はフーリエ・ログ・デコンボリューション法14)を用いて強度の除去を行った.バックグラウンドを除去した後のスペクトル強度の規格化には, sum-rule法による以下の式を用いた.∞[ ] =ωεωωπ2∫Im ? 1 ( ) dωP20[][] +[ ?]1 2 2[][] +[ ?]2 2 2ここでのプラズモン共鳴振動数ωPは, h-DIAの価電子密度から導出したhωP=31 eVの値を用いる.上記,フーリエ・ログ・デコンボリューション処理と,損失関数の規格化を行う際,計算上ではスペクトル強度を0~∞eVの範囲で積分する必要がある.本解析では50 eVより高エネル図5(a)h-DIA,(b)c-DIAの損失関数と誘電関数.(Loss functions and dielectric functions of(a)h-DIA and(b)c-DIA.)日本結晶学会誌第55巻第5号(2013)305