ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No5

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日本結晶学会誌Vol55No5

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日本結晶学会誌Vol55No5

新規ペロブスカイト型ビスマス圧電体薄膜の作製とその特性評価菱面体晶と正方晶の共存は,最も広く使われているPbZrO 3-PbTiO 3の固溶体でも同様の菱面体晶と正方晶の中間にも存在していた.したがって,この共存領域で圧電性が大きいことが期待できる.また膜厚約200 nmを境に共存相の組成領域が変化することがわかる.膜厚が薄い領域では基板からの圧縮歪の影響により,正方晶領域が広がることが原因であると考えられる.図7に組成相境界付近の組成をもつBiCoO 3-BiFeO 3エピタキシャル薄膜のラマンスペクトルの温度依存性を示す.室温から700℃までは強誘電相に起因するスペクトルが観察されたが, 800℃ではそれらのピークはほぼ消失していることがわかる.これは700~800℃の間で相変化を起こしていることを示し,高温では強誘電性のない立方晶相へ変化したと考えられ図7 0.16BiCoO 3-0.84BiFeO 3薄膜のラマンスペクトルの温度特性.(Raman spectra as a function of temperaturein 0.16BiCoO 3-0.84BiFeO 3 thin films.)る.この温度は,高圧合成法で作製された同じ組成の紛体の高温XRDの結果ともよく一致する.このことからキュリー温度の高い組成相境界がBiCoO 3-BiFeO 3に存在することが明らかになった.4.放射光を用いた電界印可下その場圧電定数測定装置の開発と用途12),13)4.1放射光X線回折を用いた“分極-格子歪-電場”その場同時測定装置圧電性の起源は電界(E)に対する格子歪(?x),またはその逆の現象である.その現象を式で表すと,? x = dE(1)ここで, dは圧電定数である.圧電特性の評価を行う際,定量的に値を決定するにはIEEEに定められた方法で測定する必要がある.しかしながら,薄膜形態において必ずしもその条件を満たせるとは限らない.従来であれば圧電応答顕微鏡(Piezoresponse Force Microscopy, PFM)やレーザードップラ計を用いて測定が行われてきた.より定量的な見積もりを行うために,われわれはX線回折を用いた格子歪測定を提案する(図8).時分解機能をX線回折測定に付加することで,電界印可下における格子歪を直接観察することが可能となる.シンクロトロンX線の高輝度特性を活かし,ドメイン構造の変化や構造相転移を時間に対して追うことが可能になることも利点である.さらに,非常に高速なナノ秒オーダのパルス電界を印可することで,ドメインの応答速度についても議論が可能となる.また,新規強誘電体材料の開発の際に必ず伴うリークの原因を除去することもできる.これらの研究はWisconsin-Madison大学のEvans研究GPにおいても測定が行われているが,今回開発した装置はそれに加えて電界印可下において分極値の情報も同時に取得可能である.これにより,電気エ図8SPring-8における分極-格子歪-電界同時測定装置の概略図.(Schematic of“Polarization-Lattice strain-Electricfield”measurement system at SPring-8.)日本結晶学会誌第55巻第5号(2013)299