ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No5

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日本結晶学会誌Vol55No5

日本結晶学会誌55,296-301(2013)最近の研究から新規ペロブスカイト型ビスマス圧電体薄膜の作製とその特性評価東京工業大学応用セラミックス研究所安井伸太郎東京工業大学大学院総合理工学研究科舟窪浩物質・材料研究機構坂田修身Shintaro YASUI, Hiroshi FUNAKUBO and Osami SAKATA: Fabrication andCharacterization of Novel Perovskite-Type Bi-Based Piezoelectric Thin FilmsNovel perovskite-type Bi-based piezoelectric materials which was discovered by high pressuresynthesis were fabricated by MOCVD method. We also suggested a piezoresponse measurementsystem using synchrotron X-ray for In-situ measurement of“Polarization - Lattice strain - Electricfield”at a same time.1.はじめに1.1非鉛圧電体材料探索の新規アプローチ近年,環境問題への関心の高まりから,従来から広く使用されているペロブスカイト型構造を有する鉛系圧電体に替わる非鉛圧電体材料の探索が幅広く行われている.非鉛圧電体としては, LiNbO 3などのリチウム系化合物, 1)Bi 4Ti 3O 12などのビスマス層状化合物など2)の研究もあるものの,そのほとんどは,鉛系圧電体と同じペロブスカイト型構造を有するBaTiO 3などのペロブスカイト型バリウム系化合物, 3) KNbO 3などのペロブスカイト型アルカリ金属系化合物, 4)そして(Bi,K)TiO 3などのペロブスカイト型ビスマスアルカリ金属系化合物5)である.これまで報告されているいくつかの代表的な鉛系圧電体および非鉛系圧電体の圧電定数d 33と,キュリー温度の関係について図1に示す.アクチュエータなどの用途ではより大きな圧電性が,一方センサーなどの用途ではより高いキュリー温度が要求されることが多く,両者がともに大きい材料が理想の材料の1つと言える.なぜなら,キュリー温度を超える温度では圧電特性が消滅するために,より広い温度領域で使用するためには高いキュリー温度が必要だからである.しかしながら図1から明らかであるように,現状の圧電材料ではキュリー温度と圧電定数の間にはトレードオフの関係があることがわかる.したがって,圧電性はキュリー温度を低下させることによってある程度大きくチューニングすることが可能であることがわかる.また近年の研究では,微構造やドメイン構造の制御,さらには結晶方位制御によって圧電性を上昇できる可能性が指摘されている.したがって,新規材料探索としてより難しいのは,キュリー温度の高い材料の探索であると言える.1.2 PZTに習うMPBを用いた巨大圧電性の設計現在広く使われているペロブスカイト型化合物では,さまざまな材料の組み合わせ(固溶体を作製)で,圧電性が大きくなる特異組成(モルフォトロピック相境界, MPB,図1代表的な圧電材料の圧電定数d 33とキュリー温度の関係.(Relationship between piezoelectric coefficientd 33 and Curie temperature in common piezoelectricmaterials.)図2正方晶強誘電体材料の正方晶性.(Tetragonality intetragonal ferroelectric materials.)296日本結晶学会誌第55巻第5号(2013)