ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No5

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日本結晶学会誌Vol55No5

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概要

日本結晶学会誌Vol55No5

自然免疫系RNA受容体TLR8の結晶構造433 ? 457)は構造が見えなかったものの, Z-loopのC末端側(アミノ酸残基458 ? 481)はLRR3?LRR8と疎水性相互作用を形成して,リング型構造の凹面にきれいに収まっていた.また, Z-loopの終わりにはαヘリックスが形成されており, Cys479(Z-loop)とCys509(LRR16)の間のジスルフィド結合によって構造が安定化されていた.これら2つのシステイン残基はTLR7/8/9で保存されており, TLR7/9においても同様にジスルフィド結合を形成することが予測され, Z-loopの終端はリング型構造の内側に位置するものと考えられる. TLR7/8/9はLRR2, LRR5,LRR8, LRR11, LRR18, LRR20のコンセンサスβ鎖の後ろに長い挿入ループを有している. TLR8においては,これらのループはいずれもリング型構造の同じ側の側面に突き出していた(図3B).後述するようにこれらのループは, TLR8のリガンド結合や2量体形成に関与しており,TLR7/8/9ファミリーにおいて重要な役割を果たしていると考えられる.3.2 TLR8の2量体構造結晶構造中でもリガンド非結合型および結合型TLR8は,いずれもC末端同士で向かい合った2回対称をもつ2量体を形成していた(図4).同様の2量体構造がアゴニスト結合型のTLRについて報告されている. 2)以下では2量体を形成する2つのプロトマーをTLR8とTLR8*と表記する. C末端同士の距離は,リガンド非結合型が53 A,結合型が約30 Aであり,リガンド結合によって2つのプロトマーが接近していた. 2量体界面は,リガンド非結合型が1290 A 2であるのに対し,結合型では2190 A 2であり,リガンド結合によって界面が増大していた(図5).リガンド非結合型の2量体界面には, LRR8, LRR14?15, LRR18が関与する水素結合および疎水性相互作用が形成されていた.リガンド結合型では, 2量体界面は2つのプロトマー間の相互作用界面(約75%)とリガンドを介した相互作用界面(約25%)から構成されていた.リガンド結合型のプロトマー間の相互作用界面には, LRR5, LRR8,LRR14?20が関与する水素結合および疎水性相互作用が形成されており,これらの相互作用はリガンド非結合型とはまったく異なる組み合わせで形成されていた.それに伴い,リガンド結合型ではLRR5, LRR8, LRR17?20でループの構造変化が生じていた.また,リガンド結合型は5種類の結晶構造が得られたが,いずれのTLR8の2量体構造もよく一致しており,結晶中で分子のパッキングによって生じた2量体構造でないと結論付けた.3.3 TLR8のリガンド認識機構3種の合成低分子リガンド(CL097, CL075, R848)の電子密度はいずれの結晶構造中でも明瞭に確認された.TLR8のリガンド認識部位は非結晶学的2回軸で関係づけられた2量体界面の2か所にあり,リガンドは2つのプロトマーをつなぐ糊のような役割をしていた(図6A).リガンド結合には, LRR11?14とLRR16*?18*(およびLRR11*?14*とLRR16?18)が関与していた.リガンドのベンゼン環はPhe405の側鎖とスタッキング相互作用を形成していた.リガンドのアミジノ基はAsp543*の側鎖と,イミダゾール環(R848, CL097)およびチアゾール環(CL075)はThr574*の主鎖と水素結合を形成していた.また,リガンドの2-プロピル基(CL075)および2-エトキシ図4(A)リガンド非結合型TLR8の2量体構造.(Unliganded TLR8 dimer structure.)正面図(左),側面図(右).(B)リガンド結合型TLR8の2量体構造.(Liganded TLR8 dimer structure.)CL097複合体構造を示す.正面図(左),側面図(右).日本結晶学会誌第55巻第5号(2013)図5TLR8の2量体界面.(TLR8 dimer interface.)リガンド非結合型TLR8(左),リガンド結合型TLR8(CL097複合体,右).青色はタンパク質-タンパク質間相互作用面,紫色はリガンド-タンパク質間相互作用面を表している.編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.287